時代は明治。武士の時代は終わったはずなのに、秘かに、時には派手に死闘が繰り広げられるおすすめの時代小説
●あらすじ・内容
明治十一年。大金を得る機会を与えるとの怪文書により、強者たちが京都の寺に集められた。始まったのは、奇妙な「遊び」。配られた点数を奪い合い、東海道を辿って東京を目指せという。剣客・嵯峨愁二郎は十二歳の少女・双葉と道を進むも、強敵が次々現れー。滅びゆく待たちの死闘、開幕!引用:文庫裏表紙より
●おすすめどころ・感想
目的は金。大金が欲しくて集まった腕に覚えのある人々。それは実はバトルゲームの始まりだった。生き残って東京にたどり着かないと大金は手に入れられない。自分が生き残るということは誰かを殺めていくという事。そんな過酷な状況にいつの間にか陥ってしまった者たちは何を考え、どんな闘いをしていくのか目がはなせない。
圧巻の戦闘シーンとリアリティ
今村翔吾といえば、戦場のリアルな描写が特徴です。槍、弓、剣が飛び交う戦場の臨場感が存分に描かれており、まるでその場にいるような緊張感を味わえます。特に、幕末の生き残りのような侍たちの戦術と知略には痺れるものがあります。
キャラクターの深い魅力
登場人物たちは、それぞれがこのバトルに参加せざるをえなかった事情をもっている。それぞれに葛藤や信念があり、それらが地層のように重なり合って深みのある人物として描かれているところにも惹きつけられる魅力があります。誰が敵か味方わからない状況を超えて生まれる信頼関係も見どころの一つです。
時代小説の枠を超えたエンターテインメント性
維新から明治の史実をベースにしながらも、ファンタジー要素を取り入れた物語は、重厚感と娯楽性のバランスが絶妙。時代物好きはもちろん、普段は時代小説を読まない方にも楽しめる作品です。
仕事や家庭で日々奮闘している50代のサラリーマンにとっては侍たちの闘いぶりや決断は、どこか現代社会にも通じるものがあります。
仲間との信頼関係を持ちながら東京を目指し旅する姿はまさにチームで仕事をすることの多い現代のビジネスシーンにも重なるテーマ。『イクサガミ 天』は、そんなあなたの背中を押してくれる一冊になるでしょう。
●この本をおすすめする人
侍の戦闘が好きな方・・・ほぼ誰かと誰かが闘っています。人間と人間が闘う戦闘シーンの連続です。
●著者プロフィール 今村翔吾(いまむら・しょうご)
1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥羽州ぼろ組」(祥伝社文庫)でデビュー。’20年「八本目の槍』(新潮社)で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。同年「じんかん」(講談社)で第11回山田風太郎賞を受賞。21年「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第6回吉川英治文庫賞を受賞。’22年「塞王の楯』(集英社)で第166回直木賞を受賞。他の著書に、「くらまし屋稼業」シリーズ『童の神』(角川春楜事務所 時代小説文庫)「ひゃっか!全国高校生花いけバトル」(文響社)「てらこや青義堂 師匠、走る』(小学館)がある。引用:文庫カバーより
●まとめ
「最近、心が熱くなるような物語に出会っていない」と感じている方に、ぜひ手に取っていただきたい作品です!
明治時代、時代に取り残された侍たちの生き残りゲームをリアルに描いた読みやすい作品です。